9月6日(土)10時から、「あいち国際女性映画祭2014」(主催・公益財団法人あいち男女共同参画財団、あいち国際女性映画祭2014運営委員会 開催期間9月3~7日)の上映作品の一つとして、「何を怖れる」が初めて一般の人たちに披露されました。
 会場の「ウィルあいち」4階ホール前には、早い時間から長い長い行列ができていました。

 この映画祭は、かつて松井監督の「ユキエ」「折り梅」「レオニー」の3作品すべてが日本で最初に上映された場であり、名古屋は特に根強い松井ファンが多い地域でもあります。それだけに、いつもの劇場映画とは違うドキュメンタリーで、しかもフェミニズムと銘打った作品が、一般の男女にどんな風に受け止めてもらえるか、監督自身は不安だったと言います。
 映画祭では上映後に、松井監督上野千鶴子さん田中喜美子さんとのトークショーも企画されていました。松井監督の映画だから是非観に行きたいという人たちに加えて、上野さんの声を聴きたい、田中さんに会いたいという老若男女が列を作っていたのです。

 実は、8月に行われたサポーター対象の完成披露試写会の後、修正に修正を加え、前日まで編集作業を行っていたそうで、松井監督の手に上映に使うブルーレイが届いたのは、なんと新幹線に乗る直前のこと。5日の午後4時半、出来立てほやほやの湯気の立つブルーレイ・ディスクを持って、松井監督と田中喜美子さんは名古屋に向かいました。

 満員の会場で披露された完成作品は、試写会でみた2時間の映像が、1時間51分と短くなり、一層ブラッシュアップされていました。
 派手な動きやシナリオは全くない、全編語りだけの映像、個性の強いフェミニストたちが淡々と放つ言葉に、時折笑い声やらざわめきが起こります。作品のあらゆる場面で、涙を抑えることが出来なくなっている人たちをみました。みる人それぞれの人生に、深く入り込んだ場面があったからに違いありません。
 「感動を呼ぶシーンを特に意識して用意したつもりはないのだけれど…」と松井監督。同じ場面でみる人の涙を誘うのではなく、それぞれ違った言葉や出来事が自分の人生と重なって、感性に響くのでしょう。これぞ、ドキュメンタリー映画!

 上映が終わったときは会場に広がった温かな拍手の中 田中さん、上野さん、松井監督が登場。3人の楽しいトークとその後の質疑応答では舞台と観客席が一体になったような和やかな雰囲気で進みました。
あいち国際女性映画祭
 なかでも古くからの松井ファンだという初老の男性が、劇映画とは違った魅力のあるドキュメンタリー映画を作り上げた松井監督を絶賛していました。

 「何を怖れる」という、このタイトルに心を惹かれる人も多かったようです。
 「はじめはこのタイトルはぴんと来なかったのよ」と上野千鶴子さんが言えば、「上野さんは怖れを知らない人だけど、ふつうの女は、日々いろんな怖れを抱きながら生きているものなのよ」と切り返すと松井監督。
 まさにふつうの女たちに勇気をくれる、何よりのメッセージとなるタイトルではないでしょうか。


 

◆あなたの手で、上映会を企画してください◆

 大きなスクリーンでみるのもいい、小さなスクリーンでみるのもいい、日本中の女性たちにじっくりとみてほしい、そして、何を思ったか、どう考えるか、語り合ってほしいと思います。
 賢い女たちよ、もっと自由に、思ったことは口に出していいのです。行動してもいいのです。自分らしく歩いていけばいい…、フェミニズムという言葉すら知らない人たちの胸にも響く映画です。それぞれのお住まいの近くで、是非上映会を企画してください。あなた自身の手で、松井監督や、出演者たちを呼んで一緒に語り合う場を作ってくださいませんか。

(2014・9・6)
「フェミニズムを生きた女たち」をつくる会 事務局長 前みつ子